劇団パンタカ第9回公演:平成2年4月8日(日):神戸文化大ホール
【釈尊降誕会祝典劇】
『私本西遊記』、一幕四場
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| 第3場 | 舞台上手寄り、を失い縛られた玄奘、椅子に坐らせられている。下手よりスメーダ、カマラ、ルパーの3人の姫、登場。それぞれ大きな布れをヒラヒラさせながら、小走りに絡み合うようにくるくるまわる。ピタッと止まって |
| ルパー | アッ、誰か変な人がいる |
| カマラ | お姉さま、お姉さま、きっとあの人が新しく連れてこられたお婿さんよ |
| スメーダ | そうらしいわね |
| ルパー | ねえ、ねえ、お婿さんって、なんのこと |
| カマラ | あなたはいいの。知らなくても |
| ルパー | どうして、どうして |
| スメーダ | あなたは口を開けて飛んでればいいの。そうやっていれば勝手においしい虫が口に入ってくれるでしょ |
| カマラ | そうそう |
| ルパー | そんな〜、わたしだって虫ばっかりじゃ、つまんないわ |
| カマラ | そら、あそこにおいしそうな羽虫が飛んでる |
| ルパー | えっ、どこどこーーー舞台の前の方まで来て落ちそうになる |
| スメーダ | あそこ、あっちよ、あっち・・・・(ルパー、つられてあちこち走り回って虫を追う仕草) でもカマラ、問題は誰のお婿さんかって事よ |
| カマラ | そうよね。ルパーまで、その気になったら大変。まだまだネンネのままでおいとかなくっちゃ |
| スメーダ | あの人、いくつぐらいかしら |
| カマラ | どんな人か、見てみたいわ |
| スメーダ | およしなさい。お父様に叱られるわよ。はしたないって・・・・ |
| カマラ | でも、ちょっとだけ・・・・ |
| スメーダ | じゃあ、わたしもちょっとだけ・・・・・ |
| カマラ | まあ、ずるい! |
| ルパー | あっ、スメーダ姉さん(スメーダ、カマラ、ぎょっと立ち止まる)なに?それ、どうするの?ーーー走り寄って来る |
| スメーダ | どうするってことはないでしょ・・・・・これがあなた・・・・男なのよ |
| ルパー | うわっ、うそー!これが男なの。ほんとに?若い男って初めて見たわ。お父様と大変な違いね |
| カマラ | (頭をかかえて)あ〜、いいから、あなたは黙ってて |
| ・ | ーーースメーダ、玄奘を覗き込んで・・・・・ルパー、あちこち触ってみようとする。カマラ、たしなめる |
| スメーダ | あらっ、とってもいい男 |
| ルパー | そうかしら? |
| カマラ | そうなの。でもこの人、インド人じゃない。きっとチーナの坊さんよ |
| スメーダ | あっ、わかった。ということはこの人、スンダリーのお婿さんだわ |
| カマラ | スンダリーはわがままよ、お姉さま、チーナの人でないと気に入らないなんて・・・・・ |
| ・ | ーーースメーダ、玄奘の頭を撫でまわして・・・・・舌なめずりをして・・・・・・ |
| スメーダ | でも、とってもおいしそうな頭だこと・・・・・楽しみだわ |
| ルパー | わたし、まだ一度も食べたこと無い〜 |
| カマラ | あたりまえよ。でも婚礼が上手くいってからでないと食べてはいけないんでしょう・・・・・わたしたちって哀しい宿命よね |
| スメーダ | 気の狂れたスンダリーよりわたしに早くめあわせて欲しいわ。わたしこの頃すっかりご無沙汰なのよ |
| カマラ | わたしだって淋しさがつのるとイライラするわ |
| ルパー | わたし、別にどうってことないわーーー布れを広げて走りまわる |
| ・ | ーーースメーダ、前にまわり、玄奘の頬に軽く触れて |
| スメーダ | ねえ〜、ねえ〜、起きてくださいな!眼を覚まして私のこと見てくださいな |
| カマラ | まあ〜(ずるいと言いかけて人の来る気配に)しいっ、お父様達よ・・・・・ |
| スメーダ | いけない、見つかったらひどいお仕置きよ |
| ・ | ーーー三人、あわてて上手へ退場、下手より城主のマハラジャと妃、登場、マハラジャ、ときおり大きなゲップをするのが特徴 |