暗転
第3場 下手花道、信一と圭子にスポットライト。
信一 「もう体の方はええのんか」
圭子 「うん」
信一 「救急車が来たときはびっくりしたわ」
圭子 「気がついたら病院やってん。タバコ屋のお婆さん、事情があるんやったら、何も言わんでええゆうて、、それでおいてもろてるねん」
信一 「そやけど親切な人やなあ。何や、仕事やりにくいわ」
圭子 「あたりまえやんか、なあ信ちゃん、もう地上げ屋の手伝いなんかやめてんか」
信一 「う〜ん、まあ、色々、考えてんのやけど、勝治の奴や、張り切ってるからなあ。今、俺がやめる、足、洗う言うてみ、あいつ、絶対、
プッツンして何するかわからへんど」
圭子 「あんた、この子のお父さんになるんやよ。うちはもう産むと決めたんやし、しっかりしてくれんと」
信一 「そういうこっちゃなあ。なんかピンとこえへんけど・・・・・。ふ〜ん、お腹、大分、目立ってきたなあ」
ーーーー圭子、急に思い詰めた調子で
圭子 「信ちゃん、赤ちゃん、産まれたら、男の子でも女の子でも、ちゃんと抱いてやってね。捨てたりなんかせんとってね」
信一 「あたりまえやないか、変なこというなよ」
圭子 「そやけど、赤ちゃんを捨てる人かておるんよ・・・・・。コインロッカーに・・・・・暗うて冷たかったやろね・・・・・・」
ーーーー圭子泣き出す
圭子 「うち、怖い」
信一 「どないしたんや。急に・・・・・・」
圭子 「うちはどんなことがあっても、そんなことはせえへんし、させへん、もし、そんなことしたら、うち、あんたを殺して、うちも死ぬし」
信一 「かなわんなあ、まるきり脅迫や。心配せんでもええ。ちゃんと結婚しょう。なんや、追い詰められて度胸が据わったいうか、これが
男の責任いうもんかいなあ。なんか、やる気が湧いて来たんや。産まれてくる子供のために、ちゃんとせなあかんていう気になって
きたんや。圭ちゃんの必死に負けたわ」
圭子 「うち、そないに必死かなあ。みっともないね」
信一 「ううん、違う」
ーーーー信一、圭子の両肩をつかんで、
信一 「必死て、きれいやで・・・・・・怖いぐらいにきれいや」
圭子 「信ちゃん」
ーーーー二人、そっと抱き合う
スポットライト、絞る。暗転
第4場
暗転幕、上がる
ーーーー舞台、明るくなると煙草屋の場面、婆さん、住職。隣の土地は更地になっている。
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