(8)

第二幕
 第一場

ーー明るくなると、カーテンの向こうに妊婦がうめき声を上げている。産婆姿の女のなだめたり、励ます声が聞こえる。家の者が二、三人、舞台の端で祈っている。そこへアングリマーラが現れ、家の者たちにひそひそと話し、一同うなずき、アングリマーラはカーテンごしに女の枕元で、『アングリマーラ経』を誦える。
アングリマーラ経
『妹よ、私は聖なる家柄に生まれて以来、故意に生き物の命を奪ったことを知りません。この真実によって汝に幸福あらんことを、胎児に幸福あらんことを』繰り返し誦える。
ーー妊婦のうめき声が苦しみの声から、出産に近い息づかいに変わり、ついに声が絶える。一瞬の静けさの後、産声が高らかに聞こえる。家の者たちは喜びの声を上げ、笑顔で互いに喜び合う。産婆の女がみどり児を抱き上げカーテンから出てくる。父親が抱き上げ、皆が覗き込む。
産婆が夢中で祈っているアングリマーラの肩を叩いて知らせる。アングリマーラはおおっと声を発し、我に返ると、『お釈迦様、有り難うございました』立ち上がると、おずおずと人々にちかずき、覗き込む。人々、微笑みながらアングリマーラにみどり児を手渡す。こわごわ抱いたアングリマーラは感極まって呻く。
アングリマーラ 「ああっ・・・・これは私だ。生まれ変わった私なんだ!」
ーーアングリマーラ、涙と共にみどり児を高くささげる。
アングリマーラ 「世尊よ!私は生まれ変わりました!」
アングリマーラ
  ーー賛歌「雲に覆われた月が晴れて」が流れる
「世尊よ!私は不殺生、無害という名前を持ちながら自分の愚かさのために、多くの人命を損ない、洗っても清くならない血の指を集めて指曼、アングリマーラと呼ばれるようになりました。けれども今や、仏、法、僧の三宝に帰依し、真実の道に入りました。・・・・・・馬や牛を馴らすには杖を用い、象を仕込むには鉄鈎を使います。然るに世尊は何も用いず、残虐非道な私の心を調練してくださいました。雲に覆われた月が晴れて、光を現わすようなものです。」・・・・・・・・
「私は今、悪の報いを受けています。負うべき責めを果たしております。正しい教えを聞いて堪え忍ぶ心を養いましたから今更、争うこともありません。世尊よ!今、私は生も死も考えません。ただただ生死を超える時の来るのを待つのみです」
(NA)こうしてアングリマーラは堪え忍んで、修行を続け、お悟りを開き、アングリマーラ長老と呼ばれ、人々から尊敬されました。現在もインドの祇園精舎の遺跡の一画にアングリマーラ長老の立派な供養塔が残っております。
それではみなさん合掌をお願いします。
この尊いみ教えを説き明かしてくださった
お釈迦様の御名を
南無本師釈迦牟尼物と三回、お誦えしましょう。
南無本師釈迦牟尼仏!
南無本師釈迦牟尼仏!
南無本師釈迦牟尼仏!

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